高校野球開会式

地方大会が始まった。
部員数の少ないうちの次男のチームは、全員が背番号を背負って行進した。ここだけは特別な場所だ。試合じゃないのに見に行くのかと聞いた人があった。いや、そうじゃない。まだ、だれも負けていない矜持溢れる場所に浸りに行くのだ。このメンタリティを理解できない人は、スポーツからブンガクを生み出すことができまい。あのスタジアムに響く、さまざまな思いが揺れる様を理解し、共感することに、スポーツの醍醐味がある。勝った、負けたはそれからだ。負けてドラマが生まれた中田と、負けて温泉旅行に行ったと書かれる中村の差である。もっと上手になりたいと考えている中村と、勝ちたいと考えている中田の意識の差である。高校野球は下手だけど一生懸命だからいいという人の多くは、「渡る世間」も好きだろうし、きっと「金八先生」のファンでもあろう。「ギャルサー」とかも喜ぶかもしれないし、「笑点」にユーモアや日本の伝統文化の深奥を読んでいるかもしれない。
ファインダーを覗きながら、選手たちの思いを想起して、ボクは泣き始めていた。今ここがなににつながっているのか。ここから飛翔していくものに、心が揺れた。
明日、初戦。また、さまざまなものが動き、揺れ、響き合う。