今日この頃

この間、雑誌編集者と話していて、一番、つまらない書き出しは、「『広辞苑によると』だろうな」と、依頼原稿の一つのパターンを笑っていた。それを書かれた瞬間に、「頼むんじゃなかった」と思わせるのだが、教育関係の機関紙にはよくある。巻頭言に近い場所にそんなのを見つけると、げっそりして読む意欲を失う。
このところ、「技能」と「技術」の差異について考え込んでいるのだが、こういうときに「広辞苑によると」とやるらしい。学校の先生もすぐに「辞書を引け」と言う。その前にじっくり考えてはどうなのだと思うが、世間的な権威をもった意味を使いたいのだろう。どうしても、依頼枚数が埋まらない人には、もってこいのやり方だろう。
括りにもちゃんと定番があって、「○○だと思う今日この頃である」というもの。これで括られているとちゃんとまとめきれなかったことがよくわかるのだが、これも意外に少なくない。
こんなことを書き出したのは、先週末の地方紙の書評にこういうのがあったのだ。年輩かと思うと、ほぼ同世代。しかも、学芸員として働いている人だ。職場で添削されたか(笑)
広辞苑とはいかないが、典型的な書き出しに、「何々といえば、何々で、この本の主人公もそうしたものの一人である」とやる手も多く用いられている。関係なさそうなことを枕に持ってくるならおもしろいのだが、大根の話をするのに、沢庵で前ふりするから、あんまり広がりと豊かさに欠ける。当の書評はそれもやっていた。
たまに、地方紙も読んでみるものだな。いいネタが見つかる、と思う今日この頃である。