心の野球

生まれて初めて煮込みラーメンという変な食い物を食べていたら、息子がG+を入れた。女子高生とジャイアンツが野球をしている。ジャイアンツがいろいろ言われているけれど、なかなか工夫をしていて、あまりファンに迎合するやり方をしないだけのことで、例えば、ロッテの2軍と合同チームを編成してイースタンに参入するなど構想など、プロ野球の動きの中心にあるのは、良くも悪くも巨人である。
そのまま続けてみていたら紅白戦。あ、桑田だ。そのまま、テレビから動けなくなった。
紅白戦では、ショートで4番。フィールディングも見たいものだし、バッティングは未だに高校野球の記録に残っているくらいだから、それはそれなりに楽しみであったが、おそらく、最後のバッターに投げるのではないかとの予兆を滲ませている。球場も全体がその期待感と終わってしまう切なさに包まれていて、阿部が高校野球に続いて投げていたり、思い切りホームランを打ってみたりと一人だけ別の感覚で野球をやっている以外には、何よりも盛り上げ役のアナウンサーまで、桑田がらみの空気に絡め取られていた。
かろうじて、4番サード二岡には反応していたが、サードにサウスポーの内海がいることや、センターの林が左手にグラブをして、右で投げていること、そして、元日本ハムの古城が小笠原の真似をして打っていることなど全く反応できないでいる。桑田はしっかりと先制のタイムリーを放つ、また、センターに抜けそうな大きなバウンドを上手に処理するなど、そのセンスの良さを見せながらやがて来るべき時間に向かっていた。
最終回で2死を取った阿部がショートを指さす。見れば、桑田の足には投球用のスパイク。ついに、この時間がやってきた。バッターは、イ・スンヨプに代わり、123キロ、124キロ、126キロのストレートで3球目は空を切った。18番の終焉である。
試合後、大西、堀田とともに、ファンへのあいさつ。律儀なあいさつは、時々大きく間合いを空けて、「18番桑田の野球は心の野球です」と告げた。
この場所だけは、どんなに多くの機会や時間があふれていても、特別な場所。心の野球。その哲学にボクが立ち入れるのは、もう少し先のことかも知れない。