植木等

小さい頃、不覚にも「サザエさん」を楽しみにしていた。慚愧の至りだが、「笑点」の本を買うほどのファンで、日曜日は6時から30分へこむなあとさえ思っていた。当時、シャボン玉ホリデーを楽しみにしていた小母とよく争ったが、さすがに定職もなくぶらぶらしているだけの小学生では思うような権利も発生せず、クレイジーだの、双子美人だのを見せられていた。見ながら、今日もカツオくんは植木鉢を割ったり、ワカメちゃんはジェラシーに身もだえ、イクラちゃんは「ですうう」などと相槌を打ったりしていたのだろうかなどと、心を捩らせていたが、エンディングのスターダストにはうっとりしていた。
ことによると、ボクがジャズなんか聴くようになったのはそんなところに根っこを持っているのかもしれない。ゲバゲバとシャボン玉は、少年の心に諧謔とニヒル、グルーブを植え付けた。
植木等は世界で初めてギターをストラップでかけたという伝説がある。本当かどうかは知らないが、坊主の倅がギターを袈裟にかけるというのも、なかなか縁を感じさせる。
一度、生で観たかった。無念。合掌。