外来種

朝青龍のことを考えていたら、先週の夕方、NHKラジオでやっていた外来種の話を思い出した。NHKの解説員の人が、ブラックバスブルーギルなどの外来魚が日本の在来種を駆逐している情況をステレオタイプに語っていた。
気になったのはその語り口だ。

ブラックバスは大口バスと呼ばれるように大きな口でメダカなどを一気に呑み込んでしまうんですね。

こういう言い方には、日本テレビ北朝鮮報道と同じ語り口を感じて気味悪い。ブラックバスが在来種に影響に与えることは事実だが、その食べ方にまで脅威や恐怖があるような描き方をするのはおかしい。ヤマメも、イワナも獰猛である。そういう性質なのだから仕方がないのに、ひ弱で繊細なメダカが、猛々しく粗暴で野卑なブラックバスに陵辱されていくような表現がされている。ジャングル大帝レオでは肉を食わなくなるのだが、そんなのはちっぽけなヒューマニズムなのである。背負ってしまった業まで引きずり、受け入れてこその生である。
その番組では聞き手のアナウンサーが立派で、そういう外来種が新たな環境を作っていくことになりませんかと聞いている。それに対して、数万年かかって作りあげたものを瞬く間に蹴散らしてしまうことや交雑などの被害により生態系を大きく変えてしまう可能性として答えていた。そのまま聞くとなるほど合理的で納得できる解説だが、冒頭にブラックバスは凶暴で獰猛な魚であると聞かされていると、どうにもいけない。そういうバイアスがかかりまくって、ある人には好都合だし、ボクには気持ち悪くて仕方がない。
朝青龍だってそれなりに愛想があるし、何よりあの体でトップを張るにはいろいろぎりぎりの選択もあるのだろうと思うし、それで実績を残しているのは大したもののはずである。また、相撲の取り口と彼の今回の仮病疑惑はちゃんと分けて考えてあげないといけない。ブラックバスが躊躇なくメダカを呑み込むように、厳しく激しい攻めを取り沙汰されてはただの全否定である。その全否定が「外来種」を根拠に始まっているように思うからいよいよ気味が悪い。
ウルトラセブンの「ノンマルト」を思い出す。
ボクたちは侵略者じゃないのか。この数十年、ブラックバス以上に生き物とその生息環境を駆逐してきたのはボクたちじゃないのか。そのつけをブラックバスに象徴して追い払うのは気持ちのいいことではない。メダカがいなくなったのではなく、メダカが住めるような場所がそもそもなくなってしまったのだ。
その環境の変化をある程度ふまえたうえで、それでどうするのかを冷静に、そして、現在の状態を一旦受け入れた上でのサスティナブルな環境を議論すべきだと思う。でなければ、日本中のタンポポをむしり取らなくてはならない。