スティール・ドラム

スティール・ドラムってのは、ドラム缶をたたいて音程が取れるようにしていろんな大きさのドラム缶でオーケストレーションする。トリニダード・トバコの音楽らしい。スキヤキ・ミート・ザ・ワールドというエスニックな音楽のイベントが、十数年前から開催されている町があって、そこで行われたワークショップで生まれたのが、スキヤキ・オーケストラ。今回、地元の高校の文化祭で演奏してくれることになった。
いつ頃か、「町おこし」なんてことばが流行っていて、そのムーブメントで生まれたオーケストラだが、エスノな音楽に目を付けたのがうまくいったらしく、順調に演奏の幅も広げているらしい。イベントがいつも8月の末に企画されるので随分行きたい思いがありながらも、まだ邂逅を果たしていなかった。
演奏は体育館。外がいいんだが、そうもいくまい。また、観客はまばら。なかなか知っている人も少ないだろうなとも思う。地元の中学校と高校の演奏会がそこそこ入ったりするので、結局、地元のケーブルテレビを見る「だれか知っている人が映っていないか」という動機付けによく似た感覚で望まれているらしい。
しかし、音が出てからは圧巻。ボクの認識が間違っていたことが知れる。
ドラムというから打楽器だと思っていたのだが、それにしてはドラムセットがあるのは不思議だなと。その違和感は曲が始まるとすぐにわかった。メロディ楽器なのだ。実に多彩で、広がりのある、同時に、ムラのあるおもしろい響きをもっている。そのうえ、演奏もよく慣れていて身のこなしもいい。これは野外でやったら猛烈に受けるだろう。実は、ちょっと検討したことがあったのだが、当時、ある理由でブッキングまでも到達できなかった。あの頃、あの場所でこれをやれたらと、今になって悔しく思えた。
この空気に臨することができた人がそれほど多くなかったのは残念だが、こんな素晴らしい演奏をここに持ち込んだ高校のスタッフに感謝。母校捨てたもんじゃない。もっとちゃんと聴いてもらえるよう、ある場所のある企画に提案してみたい。
作ってみたいとも思っていたが、少しそれは難しそうだった。かなり繊細なものらしい。ガムランとの違いを少し勉強しておきたい。