3000本安打

イチローが日米通算ってのも変な言い方だな。NPBとMLBの2つのプロリーグ通算ということなんだが、3000本のヒットに達したそうだ。たしかにだれよりも多くのヒットを打ったことはすごいのだが、ひりひりするような勝負や優勝争いなどにどれだけ巻き込まれているかを考えると、実に残念でならない。そのような場所でもイチローは平気で安打を積み上げる人だろうから。
8対2で勝っている試合の終盤、3番手の敗戦処理からホームランを打って稼いだ打点や本塁打にどんな価値があるんだろう。だから、ボクは数の積み上げが嫌いなんだ。ジャイアンツで1シーズン最も多くの安打を放ったのは清水であるが、彼がジャイアンツ史上ナンバーワンのヒットマンではないことを誰もが知っている。
1本のヒットが3000回あったばかりで、それぞれの1本1本に多くの力を注ぎ込んだから価値がある。簡単に、「うれしいですね」「日本人の誇り」「次は4000本」などと無責任なことをコメントしている人たちはきっと野球を知らない人だろうと思う。
同様に、タイブレークルールの導入。そうしたルールがどうこういうよりも、ノーアウトのランナーを出さないことが最も戦術として効果的である野球という球技に、そもそも決着をつけるためにランナーを置くという選択が冒涜だ。オシムがPK戦をくじみたいなものだとして見ないのと同様、そんなことするくらいなら最初から抽選でやっちゃえよとさえ思う。
数字だけが走ってしまうのは、野球の全体像を見ていないからだ。2割5分でも小笠原のスイングに打たれるのは、もしかすると文学的な楽しみですらあるかもしれない。そして、その文学はすでに大衆から離れた純粋なものになっているようでもある。
こうやって素直に国民として喜べないのは、イチローがプライベートで和田アキ子と仲良しであるという極めて不愉快で、不釣り合いで、不条理で、不合理で、不必要な事実が背景にあるのかも知れない。
翌日の報道でも残念なコメント。NPBの1200本あまりを上乗せすることについて、安打率は日本の方が低いのでNPBの方がレベルが高いと言っている。いや、そう表現されている。レベルの高い場所を目指してきたことと、日本での技術を磨いたことが今につながっているという発言とすっきり会ってこない。そのうえ、毎日和田アキ子と電話していると一方的に和田アキ子の発言。やめてくれ。あなたとイチローがつながっていようといまいと、ボクらは彼の姿に感動できるのだ。
ああ、また、感動押し売りの五輪が始まる。