佛の顔

父は人相の悪い方だったと思う。昔から少々老け顔で年齢に見合ったようにはみられなかったはずだ。
徐々に年齢と顔立ちが近づいてきて、両方がしっくり収まると、柔和で慈悲深く、そして、険しさではなく、厳しさを湛えた表情になってきた。ボクにはそれが何ともうれしかった。
身体を悪くして十分に遊べなくなったけれど、昔語りするときの愉快な表情は大好きでした。
数日前から、ちょっと苦しくなって、寒い朝、そのまま眠ってしまいました。
自宅に戻るときには猛吹雪になりました。
座敷に寝かされた父の顔は、佛の顔でした。すべてを受け入れ、すべてに頷いてくれるそんな表情になったと思っていたら、弔問客の女性が、「私は見たことがないけれど、良寛さまに似てらっしゃる」と申された。
そうか、そうだな、良寛さまか。
また、一つ宿題をいただいた。
合掌。
もう苦しいところはなくなったね。
静かに眠っていらっしゃる。