堪忍箱
宮部みゆきという人のすごさは、大きな事件がないのに、そこに秘めた人の怨嗟とか、情動とか、欲とかいったものを実に巧みに描き出し、悪意とはいかないまでも、罪とはいわないまでも、どこかひっかかってくる人の世の辻とでも呼ぶ場所を上手に提示してみせてくれるところがある。
と、いいながら、正直多くを読んだ訳ではないのだ。時代物しか読まぬ。この人がボクの一つ年上だとは、いつもそこが信じられぬ。東野圭吾あたりも同時代作家だと思うのだけど、こちらはどうもあまりなじみがない。同じ時代を生きて、そのなかえ作家という姿を突き詰めると、こうあるかもしれないという姿なのだ。野球をやっていた仲間がその才能と努力でメジャーリーグで活躍している感じなのだが、宮部みゆきは、さしづめ「名人伝」のような気配があって、思いもよらない方向に姿を見せている、そういう感触を感じている。
といいながら、時代物しか読めない。あとはボクには過剰にすぎる。所詮、フォーマルもブランドのドレスも似合わない。そこらの綿シャツを適当に着込んでいく市井がお似合いである。
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