雨飾温泉

紅葉も悪くないと思って、雨飾温泉へ。もともとは梶山新湯と呼び、江戸時代に開かれたということ。泉質は、ナトリウム炭酸水素泉でこのあたりには多いのだが、何より自然湧出、自家発電で余計な電力を使いたくもないので、かけ流しもいいところなのだ。
自然湧出のお湯はこのあたりにも何カ所かある。小川温泉もそうだし、黒部峡谷の沿線はほとんどそうだ。蓮華温泉のいくつかのお湯はまったくそうだし、沸かし湯でも湧出するお湯を適温まで温めているところは少なくない。そうした温泉のお湯は概して柔らかく、無理がないのである。道理なのだろう。
根知谷をシーサイドスキー場の前くらいから対岸の山道に入る。ところどころに妙な文句が書かれた案内があり、らーめんの看板まである。どんなところが待っているのか、行ったことのない人には少々不安になるだろう。ボクの車でも2速を使うような道で、時折すれ違いのダンプがやってくる。その分、景色はすさまじく圧倒的に、鬼が面山などいわゆる海谷山塊が紅葉の彩りと岩肌を巧みに塗り分けて美しい。

時間が午後になっているので空気がぼやっとして、初冬のきりりとした様子が出せなくて悔しいが、十分に美しい。

12キロとあったが、30分くらいかかってようやく到着。砂防の工事のためにクルマで近づけるようになったが、昔は、歩いてアプローチしなくてはならなかった。百名山の一つ、それも深田久弥が最も愛した山の一つに数えられるだけに、越後側の登山口としてよく知られている。ここの露天風呂は、昔から「都忘れの湯」と呼ばれ、絶境の秘湯として名高かった。

いかにも登山客が佇む場所。ここからゆっくり歩いて4時間と書かれている。ボクは信濃のルートからしか上がったことがなく、一度比較的空いているこちらから上がりたいものだと思うが、なかなか体力に自信がなくなっている。今年の夏の立山で、いつもは駆け上がれた場所で息が上がって、元々強くもないのにすっかり衰えを感じている。

外観は山小屋。中に入ると、麓の民家を移築したことがよくわかる。こういうところで何もせず本でも読んで暮らすのも嫌いじゃないな。

お風呂は随分人が多くて撮影できなかった。
4人も入ればいっぱいの木の湯船で積み上げられた石から湯が流れ込む。時々、ごほごほむせるようにお湯が滞るのは、まさしく自然湧出ゆえだろう。洗い場は水しか使えないので、湯の花たっぷりの湯船をくみ上げて使うより他にない。不釣り合いとも思えるようなボディソープとシャンプーが置かれていたのが、亭主の様子を表しておもしろい。風呂上がりに効能書きを読めば、痛風にも効くという。日帰り入浴500円。
帰りに、海谷山峡パークへ寄ってきた。以前は毎年恒例のように訪ねていた場所だが、ずいぶんと整備された様子で、3時を過ぎていたが、クルマが点在しているところを見ると、その隙間を埋めるように一杯だったことが知れる。ジオパークの指定でなかなか元気になっている様子である。

案内板によると籠の渡しの落下で徒渉が大変だったが、今は橋ができている様子である。梯子はどうなっただろう。楽な行程でいろいろ味わえるルートで、子どもたちを連れて行くにはとてもおもしろい場所だった。また、行ってみたいものだ。