新幹線を各県一カ所には必ず停めること

北陸新幹線の金沢延伸に伴って新潟県の泉田知事は、各県に1カ所は、すべての列車が停車する駅を置くことを要求している。これは、北陸新幹線上越市内の駅ができても、現在直江津から北越急行を経由して越後湯沢に出て、そこから上越新幹線を利用するのと都心までの時間は大差なく、また、場合によっては利便性が低下する場合もあり、並行在来線の廃止もふまえると、住民の生活レベルが低下するのではないかという懸念を抱えているからで、沿線自治体の首長としてはもっともだろう。莫大な地元負担金を担保にそうした要求をしているのも、地元負担金が公金で税金だからだ。
ところが、この情況を面白がらないのは、富山、石川県である。26年度の開業に向けて財政措置を沿線の各県が用意しなければ、予定通りの建設が進まない。そのため、他県の知事までもが口を出す。
隣県の知事は、そんなことを認めれば、わが県への新幹線の到着時間が長くなる。2時間7分ともいわれている旅程がさらに5分から7分延びてしまう、とはっきりと問題にしている。
新潟県内には、上越の他に、糸魚川にも駅が出来る。富山県内には、新黒部、富山、新高岡の3駅。新潟は、長野県境からかすめるような通過の仕方だ。
具体的に、A駅からB駅までどれだけかかるかというよりは、定時運行の鉄道の場合には、例えば、今この時間にB駅に行こうとした場合に一体最短で何分かかるのかを考える必要がある。任意の時間を選ぶ自動車とは違う。
例えば、今午前8時30分であったとする。午前8時20分A駅発の列車なら2時間7分後の午前10時27分にB駅に着ける。しかし、次の列車が仮に午前9時20分ならば、B駅の最短到達時刻は、同じ時間で走行できるとしたら午前11時27分であり、2時間57分となる。これが、もし、30分間隔で運行されていれば、午前10時57分、2時間27分でB駅に到達できる。
つまり、列車の運行を考えた場合には、列車の運行を考え合わせないと利便性を把握することは難しい。A駅とB駅を1時間で結ぶ列車があっても、駅へのアクセスや、1日に1便の運行であった場合には、利便性が著しく向上するとは言い難い。
そのことから、新潟県知事のこだわりは容易に理解できる。同時に、新潟県知事は奇妙な思いを抱いているに違いない。隣県の知事はこの提案に同意すると考えていたからだ。隣県知事は驚くことに、終点ではない自分の県の駅に列車が概ね止まるだろうと考えているのだ。その議論の様子が、地元新聞に掲載されていた。
ダイヤ運行は、JRがイニシアティブを取るのだと隣県の知事は言う。そうだとすれば、最速運行は、東京・大宮・高崎・長野・金沢であろう。そう考えない方が不自然である。これを考えると、ちょうど各都道府県に1カ所停まっているので、東京・大宮・高崎・長野・上越・富山・金沢とすればいいというのが新潟県知事の主張だろうか。おそらく、隣県知事の気持ちは、長野・上越が接近しすぎているということで無駄が多いと考えるのだろう。
しかし、上越糸魚川が約50キロメートル離れているのに、富山・新高岡などはおよそ20キロメートルしか離れていない。速さをいうなら、まず新高岡など停車しないだろう。
ローカル紙の論調も、そういうこと言っていると26年度開業できなくなるよと新潟県知事に小言を言っている。
先に話し合うのは、並行在来線である。隣町にも行けなくなるのだ。そうした議論を先送りしながら進むのは、普天間問題よりも始末に負えない。