年始特別号・総合的な学習としてのブラックバス

晦日に、新聞の厚いのがどーんときて、だれだろうこんなものわざわざ読む人はと思っているが、要は広告の媒体を増やしておかなくてはならんようだななどともののわかったようなことをいい、少々侮蔑しながらも読んでみたりする。スポーツやら芸能やら、ボクが好きなサブカル系の記事が多いせいもある。
ちゃんと読み込んだのは、今年、富山市富山港線を払い下げて路面電車化するポートラムである。新規の路面電車は数十年ぶりだそうで、富山市では新幹線の開業で北陸本線が連続立体高架になることに合わせて現行の富山地方鉄道が経営する路面電車に接続して、さらに路線延長で環状線を造る計画も具体化している。どうも北陸は東京追随の慌てず付いていくタイプの典型的な田舎都市だったが、こういう新しい町づくりを積極的に仕掛けていく攻めの姿勢は評価したい。特に、箱物ではなく、都市の交通インフラの整備でくらしの仕組みを変えていこうとする都市デザインの方向性は、少々、現在のくらしぶりとのフィット感が気になるが、これまでに見られないスタイルである。
2月末で富山港線を廃止して、4月の末までに集中工事を施して開業する予定だそうで、特に用事もないけど鉄道好きとしてはぜひ乗っておきたい。終点の岩瀬にいい蕎麦屋があるという噂なので、この電車で行ってみたい。料金も信用乗車や平日昼間の半額乗車も予定されているらしく、そのあたりも楽しみである。
しかし、北陸新幹線はどのような戦略があるんだろうか。長野では新幹線開業以来ストロー現象でホテル旅館などの撤退が相次ぎ、富山も懸念されているばかりか、金沢までの開業なので、通過駅に留まってしまうのではないかとの心配があると地元新聞は社説に書いている。心配じゃなくってそうなるんだろうと思うんだけど(笑)そこで、この地元新聞は、九州新幹線を挙げて、ストロー現象が起きていないと書いていて、これを励みにみたいな論調だが、九州はストローにならんでしょうが。つながっていないんだもの。
まあ、このへんはこれまでも毎年掲載されてきた記事なので、こんなに書く必要はなかったか(笑)
気になったのは、こっち。環境保護の関係で、去年は、もうみんながすでに忘れ始めている愛地球博のあった年で(さすがに、年末の1年を振り返る記事での扱いが小さいのに驚いた。やっぱり、トヨタ博だったか)、そういうこともあるから成果を次につなげようという発想の特集記事だったけど、ブラックバスの殲滅に子どもたちの力を借りようなどと恐ろしい内容がうれしそうに書かれていた。
これ、ご飯食べてから、また、書きます。鴨饂飩です。
例えば、こんな光景だ。総合的な学習の時間。そうだな。5年生。私たちの環境を守ろうとかいうテーマ。発表会をシミュレートしてみよう。以下のことばは、一列に並んだ子どもたちがやけにぱらぱらと文字が踊るパワーポイントの画像を背景に話す様子を想像して欲しい。男女交互にしゃべるイメージね。

私たちは、私たちのかけがえのない環境を守るために何ができるのかについて学習を進めることにしました。
私たちの住む○○市には、たくさんのかけがえのない動植物が住んでいます。
(中略 いろんな動植物がでてくる。むろん、メダカもでてくる。しかし、画像はなぜかヒメダカだったりする)
しかし、こうした貴重な動植物が年々減っていることがわかってきました。
(わかってきましたには独特のイントネーションがあるが再現できない。残念)
これはタンポポです。花の付け根を見てください。日本在来のタンポポはここがこうなっていますが、今、私たちの周りのほとんどはこうなっていて、西洋タンポポといい、外国から入ってきて在来のタンポポに代わってあたりに咲き乱れています。
これはオオアワダチソウです。(中略)
次に紹介するのは、なかでも最も恐れられているものです。この大きく開けた口、鋭い牙、不気味な体。そうです、小魚などを食べ尽くす凶暴で恐ろしい池の魔物ブラックバスです。
(中略 ここでブラックバスの恐ろしさについていろいろ事例が挙げられる。なかには、ブラックバスが小魚を食い尽くして共食いしている様子などもでてくる)
地域のみなさんがせっかく放流したワカサギもほとんどがブラックバスに食べられてしまい、毎年楽しみにしているワカサギ釣り大会も開くことができなくなりました。
私たちはこのブラックバスをどうにかして減らすことができないかを考えてみました。例えば、薬物や水を抜くなどの方法を使うと、ほかの生き物にも大きな影響を与えるため簡単には使えません。最も有効で確実な方法は、ブラックバスを捕獲して殺してしまうことです。
そこで、私たちは、網や釣り、罠などを使ってブラックバスを捕まえることにしました。
(と、ここでブラックバスの捕獲の様子がでてくる。わー捕れた、捕れたとか言いながらうれしそうにつかまえて、そのまま近くの穴に放り投げられる。ぴちぴち無惨にはねるブラックバスの哀切を帯びた表情がアップになり、魔物の末路を示す)
私たちは1ヶ月間○池に通い、全部で、1000匹のブラックバスを捕獲しましたが、まだまだこれで全滅させることはできないそうです。これからも、時間を見つけては工夫を重ね、環境を破壊するブラックバスを1匹残らず退治して、未来に美しい環境を残していきたいと思います。
みなさんも私たちといっしょにブラックバスを退治しませんか。

と、山のように積み上げられたバスの死体を前に記念写真を撮る子どもたちの映像に重ねて、「未来のために」とかなんとか文字が飛んでくる。
発表のあとで、環境省の役人が「みなさんの取り組みで地域の環境が守られるのです」と講評。これに、地域環境賞が与えられたりする。
書きながら想像したのは、占領した土地でさんざんやらかした挙げ句、信じられない記念写真を撮っているような光景。
実際、いろんなところで話していると、ブラックバスって悪い魚なんでしょなんて言われる。きっとね、きっと、必ず、今書いたような光景はどこにでもあるよ。これでいいんだろうか。子どもたちが正義を名分に生き物を殺してにやにや笑っているような。