親父の本棚

父の本棚から拝借して読んだ。

おせん (新潮文庫)

おせん (新潮文庫)

人情武士道 (新潮文庫)

人情武士道 (新潮文庫)

いずれも、いわゆる中間小説。文学的には取るに足りないと言わしめるもの。しかし、系統はしっかりと受け継がれ、例えば、山本一力の作品はまだまだとは言え、読める部類にある。
エイベックスなんかは、ミュージシャンと言わずに、「アーティスト」などと言っている。文化的な付加価値を創造している人くらいの意味なのか、あるいは、「職人」的なものから少し上等らしい「芸術」を生む人程度の雰囲気を権威として付与しているのか、いずれにしても、所詮芸人、そんな大仰なもので人気商売を気取ったってしょうがあるまいと思ってしまう。
同様に、こういう大衆小説、中間小説のたぐいも、小説家、いや、文学者から離れた「物書き」の仕事に感じられるのか、少々疎まれている雰囲気もある。
人の業の深奥に迫るのもいいのだが、市井の市民の機微にふれる程度のものはまた、実に味わいのあるものなのだ。「劇場社会」は、「激情社会」でもあり萩本欽一の芝居がかった「みんな、ごめん」で、小泉に巻き取られたときのように一気に世論は傾くのである。
こういうのを傾城というのかもしれん。あるいは、「傾世」とでも書くか。