台風被害

多摩川の河川敷があふれた。報道ステーションでは、川幅が200倍になったなどと表現していたが、河川敷とは「川」である。平時をもとに考えるのではなく、最大水量を想定して「川」としてある領域は、基本的に「川」であると報道すべきだろう。ゆえに、固定物の設置が許されない。
その河川敷に暮らす人々が流されたらしい。救助を拒んだ人もあった。救助されてなお何事かを叫んでいた人もあった。気づかず流された人もあったのではないかと思ったが、行政は呼びかけをしていたというから、密かに流れてしまった人はないのだろう。
ああいう報道を見るたびに、川というダイナミズムから人のくらしとの結節点が欠けていると感じる。
辻まことの「多摩川探検隊」に川の生まれる場所は山というものがあった。

多摩川のもとは井戸のようなものでも噴水のようなものでもなく、山であった。山のかたまりは水のもとだ。

単眼視、モノフォニックな風景をまた見た。想像力以前の問題である。

多摩川探検隊 (小学館ライブラリー―OUTDOOR EDITION)

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