ニュートン以前

菅総理増税によって国民生活を向上させるという考え方について、理論的なモデルがちゃんとあるそうだ。
なんでも、デフレの時には、ものが容易に手に入るのでお金を使わない。そのため、資金量の総額が小さくなって、そこここでお金が巡らなくなって、さらに景気後退が進む、いわゆるデフレ・スパイラルの状態になる。そこで、使わないお金を政府が拾い上げて、財政的に、例えば、福祉や就労困難を解消する方向に政策的に使っていくことで、お金の流れを効率的にして、景気浮揚を生み出そうというものだそうだ。
お金の吸い上げ方としては、本来は所得税が最も適しているようで、今回のような逆進性のある消費税でよいのかという議論はやっぱり、あるらしい。また、財政健全化の面からすると、国が保有する資産を処分するだけでもかなりの部分の負債を削減でき、そちらが先決だという考えもある。資産に手を付けずに流れているお金の、パイプの太さや継ぎ手を換えることで解決していこうとするのか、あるいは、裸一貫で出直そうというのかということになるのかと思うが、それにしても2者択一の議論ではなかろう。
国家として、これまでに蓄えた先代からの資産を切り売りするのは忍びないこともあるだろうし、かといって、バブル期のような雪だるま以上にふくらんでいく名目価値に踊らされるのもリバウンドが怖いし、ぼちぼちでいいから何とか成長だけは確保しようというモラールの低いところから、何か新しい飛翔をと考えると、どうやら消費税の議論になるようなのだ。
経済学は、物理学に例えると、ニュートン以前だという言い方があるのだそうだ。なるほど、高度資本主義が地球全体を覆ってからそう時間が経っていない。
実際、高速道路無料化に対する大きな批判は、トラフィックの増大で地球温暖化が加速するという稚拙なものだ。地球レベルの話で、目の前の些末なことの合理性にふたをしてしまうのは、それは議論の範疇ではなく、迷信とか、伝説の領分である。そう思っていたら、例えば、ダイハツが軽自動車のハイブリッドから撤退するという新聞記事を見つけた。車両重量が重くなると、ハイブリッド化しても効率が上がらず、ガソリン車と変わらない水準に留まるのだそうだ。大きなエンジンと電池を積み、複雑な制御によって成り立っているプリウスなど所詮「環境玩具」に過ぎない。世界規模でクルマが次世代に移行するには、あらゆる面でコスト負担が大きい。そんなものを地球に優しいとか言ってうれしがって乗っている人はなかなかいい人だと言えるだろう。
ボクらはまだまだ知っておかなくてはならないこと、考えて、ちゃんと筋道のある合理的な結論を、自分自身でもっておかなくてはならないことがたくさん、ある。