負釣山

隣町の最高峰だが、僕の町からもよく見え、朝に、夕に、この山の姿を眺めていた。特に、小学校の校庭から様子がよくわかり、この山に雪がかかるとそろそろ積雪がと思わせることもあって、馴染み深い山であった。手軽に登れる山として知られているが、そういうこともあったのか、これまで、実は、自分のキャリアの未踏峰だった。
今日は、寝不足と出発が遅くなったということもあって、遠くまで行くのを避けたかったこともあって、負釣山に目的を設定した。1000m弱で、3時間ほどで全体の行程を終えられるだろう。
登山口にいくらか車があると思っていたが、僕らだけ。すぐに、カップルがやってきて、最近の装備でいかにも身軽そう。先に行ってもらおうと思ったが、出発待ちもなんだか変なので、どこかで抜かれるつもりで出発。海沿いの晴れ間がここまで届くのを期待。少し上はすっぽり雲の中。
登山道はよく整備されている。急だが、とても歩きやすい。尾根筋を歩くだけに風が通って気持ちがいい。寒いくらいで、6月の低山とは思えない清涼感がある。時折、風にあおられて葉に残った水滴が落ちてくる。
傾斜の変化がないせいかそれほどきつさも感じずに登っていくのだが、振り返るとかなりの急登。帰りが少し思いやられる。途中の熊笹のポイントでは明らかに何かが横切ったあとが数カ所。ブナやドングリの身を踏みしめながら歩くような場所もおおいから、クマにはお気に入りの場所に違いない。
約2時間で山頂。真っ白で何も見えない。山の表示板にはわくわくする山に名前がいっぱいだが、全く五里霧中とはこのことだ。雨も落ちてきて早々に山頂を辞する。
下りは案の定きつい。登るほどにかかる。蒸し暑さがじわじわ応えてくる。下りでこんなに水を飲んだのはあまり例を知らない。なかなか、歩きごたえを感じる山。ブナも美しい。眺望も良かったはずなんだ。
でも、堪能した。同行した彼女は、自宅で風呂を浴びるとそのままねいってしまった。僕も眠い。るりりりりるるりりり、僕もねむらう。