夏目雅子 俳句

町歩きの途中本屋で「サライ」を立ち読み。
夏目雅子の俳句に出会った。あらためてきれいな人だったんだなと振り返る。
俳句がまたいい。
よそから拾ってきたものだけど。

傾けば冬の夜に温
時雨てよ足元が歪むほどに
湯文字乱れし冷奴の白
青蚊帳にいつしかとなく落日
通り雨そっと握った蝉の抜け殻
夏めきし青蚊帳の肌なまめいて
水中花何想う水なのか
折れている月見草の花情人(いろ)変り
阿婆擦れた裸娘(らっこ)の肌に浮雲の影
風鈴よ自分で揺れて踊ってみたまえ
あの人を鳥引く群れが連れて行く
間断の音なき空に星花火
ぬぐってもぬぐっても汗みどろ
蟻ん子手の平にのせ我侘しむ
聖夜吉凶の星か兆の星か
寄せ鍋や湯気かき集め一人じめ
屋台まで讃美歌きこゆ聖夜かな
恋猫やなよやかに泣く間夫(まぶ)の宿
釈迦力に何故第九群れて奏でる
隣席の落第の娘の肩を抱く
野蒜(のびる)摘む老婆の爪のひび割れて
セーターの始めての赤灯に揺れて
夕暮れに芝焼き燃える天を見つ
梅酒たいらげ梅をかじって舌づつみ
鯵喰らふ味もわからず思案顔
寒空に赤い火は有り難い
ゴーゴーってる流氷の音床の中
叩いても叩いても咳(しはぶ)いて壊れた

サライ」では、青蚊帳の句に、男女の情交を見ていた。なるほど。
本気で創句したくなってきたな。
そんなことも考えて、ちょっと変わった万年筆のインクを用意している。露草の名前が付けられたブルー。いいんじゃないかな。
夏目雅子絶句。

間断の音なき空に星花火